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V2Hで後悔する人の共通点は「買った時期」!新築で必要なのは空配管3本だけ

V2Hで後悔する人の共通点は「買った時期」!新築で必要なのは空配管3本だけ

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V2H(ブイ・ツー・エイチ)とは、Vehicle to Home の略で、電気自動車に積まれている大きなバッテリーを、家庭用の蓄電池として使う仕組みのことです。車と家を専用の機器でつなぎ、車に貯めておいた電気を、家の中へ流して使います。

太陽光発電とV2Hのある平屋

なぜ、こんな仕組みが生まれたのか。出発点は太陽光発電の弱点です。太陽光は昼にしか発電しません。夜に使う電気は結局買うことになるので、昼の余りを貯めておく箱がほしくなる。それが蓄電池です。

ところが、家庭用の据置型蓄電池は7〜10kWhが主流。一方で電気自動車は、20〜90kWh級のバッテリーを積んで毎日その辺に停まっています。すでに車に積んである大きな電池を、もう一度買い直す必要はないのでは。V2Hは、その発想から生まれた仕組みです。

理屈としては、とても合理的ですよね。私も、初めてこの仕組みを聞いたときは素直に感心しました。それでも私は、新築の打ち合わせでV2Hを勧められている人には、いったん止まってくださいと言います。後悔の中身をひとつずつ数字に置き換えていくと、行き着く先がいつも「買う時期」だからです。

うち、まだEVも持ってないんだけど、「新築のうちに入れておかないと損」って言われてて…。
よく言われますよね。その「新築のうちに」が本当なのかどうか、数字で確かめていきましょう。

先に、この記事の結論を置いておきます。

V2Hは「買うか、買わないか」ではなく「いつ買うか」の設備です。そして新築時に本体を買うのは、たいてい早すぎます。新築のときに本当に必要なのは、空配管3本1万〜3万円です。

「絶対に買うな」と言っているわけではありません。時期が早い、という話です。V2Hが本当に効き始めるのは、太陽光の売電単価が落ちる5年目からになります。

🏠 この記事でわかること

  • 新築の見積もりでV2Hを勧められたとき、断ってよい根拠になる数字
  • 「元が取れます」という試算の紙に、そもそも入力欄がないもの
  • V2Hと据置型の家庭用蓄電池、予算が1つ分ならどちらを買うべきか(比較表)
  • 本体を買わずに、5年後に買える状態だけを1〜3万円で作っておく方法
目次[閉じる]

「昼に貯めて夜に使う」は、半分しか本当じゃない

V2Hで昼に電力を貯めて夜に放電

昼、太陽光が発電する。家で使い切れない分を駐車場の車へ貯める。夜、その電気を家へ戻して使う。だから電気を買わなくて済む。V2Hの提案書には、必ずこの絵が載っています。

この絵自体は正しいです。ただ、貯めた電気がそのまま戻ってくるわけではありません。

入れた電気の3〜5割が、どこかへ消えていく

電気は、車のバッテリーへ入れるとき(交流→直流)と、家へ戻すとき(直流→交流)に2回変換されます。変換のたびに一部が熱になって消える。これが往復の変換ロスです。

このロスは、どこの数字を見るかで大きく変わります。

  • メーカー・販売店が案内する往復ロス:10〜20%
  • 実際に運用して測った記録:30〜50%

実測のほうは、内訳まで出ています。充電で2割台後半、放電で4割近く。1往復させると2.5kWhほどが消えます。放電している最中も50W前後は買い続けているので、完全な自給にはなりません。入れた電気の半分しか取り出せなかった、という記録も出ています。

カタログ値と実測に2〜3倍の開きがあります。どちらか片方だけを取り出して結論にしないでください。それが、この数字の正しい扱い方です。

17時から翌3時まで、10時間放電し続けた日の収支が20円ほどのマイナスで終わった例もあります。買う電気を350円ぶん減らしたのに、売れたはずの電気を360円失い、待機電力に13円。差し引きでマイナス、という一日です。

ここでたとえ話をひとつ。バケツで水を運ぶのに、途中で2回移し替えると思ってください。移すたびに、こぼれますよね。カタログは「こぼれるのは1〜2割」と言い、実際に測った人は「3〜5割こぼれた」と言っています。
えっ、半分こぼれるの? じゃあ、うちがどっちに近いかで全然話が違うじゃん…。

少ない電力をじわじわ使う家ほど、V2Hの効率は落ちます

ロスが悪化する理由も、はっきりしています。断熱性能の高い家は、そもそも一度に使う電力が小さい。すると放電が、少ない電力を長い時間かけて出し続ける運転になります。V2Hは大きな電力を短時間で流すほうが効率がいいので、細く長く使うほど、待機で消える分の割合が膨らんでいきます。家の断熱性能を上げるほど、変換効率は悪くなる方向へ働きます。

高断熱・低負荷・長時間放電という条件で出た数字ですから、どの家でも同じ結果になるわけではありません。ただ、少ない電力をじわじわ使う家ほど不利になる、という向きだけは変わりません。

性能のいい家を建てたのに、そのせいでV2Hが不利になる。なんだか意地悪な話ですよね。

そして、省エネ住宅とV2Hをセットで売っている会社が、この話を資料に載せることはまずありません。載せた瞬間、自社が売っている2つの商品が互いの足を引っ張っていると認めることになりますから。担当者が隠しているというより、社内の資料にそもそも書かれていないんだと思います。

📌 この章の要点
V2Hに入れた電気は、まるごと戻ってきません。カタログで1〜2割、実測では3〜5割が消えています。しかも、断熱性能の高い家ほどロスは大きくなる方向に働きます。

最初の4年間は、V2Hを使うほど損になることがある

さきほどの変換ロスに、もう一つ、制度の変化を掛け合わせます。

5年目に、売電単価が24円から8.3円に落ちる

2026年度に認定を受ける住宅用太陽光(10kW未満)の買取価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWh。買取期間10年は変わらず、ならすと約14.58円です。最初に高く買って早く回収させる「初期投資支援スキーム」に切り替わったためです。

ひと昔前は「11年目の卒FITで8〜9円に落ちる」が定番の説明でした。いまは、卒FITを待たずに5年目で落ちます。卒FITを前提に作られた古い回収シミュレーションは、この時点でもう計算が合いません。

なお、屋根が広い平屋は太陽光の容量を確保しやすいのですが、それは太陽光の話であって、V2Hの損得とは別の話です。

「売る」か「貯めて使う」かの分かれ目は、往復ロス22.6%

余った1kWhを「売る」か「貯めて自分で使う」か。損得は掛け算で出ます。売れば単価そのまま、貯めて使えば「買う電気の単価 ×(1 − ロス率)」。買う電気の目安単価は31円/kWhとしました(プランや燃料費調整額で動きます)。

期間売った場合貯めて使う
(ロス20%)
ロス30%ロス50%勝つのは
1〜4年目24.0円24.8円21.7円15.5円ロスが約23%を超えると「売る」
5年目以降8.3円24.8円21.7円15.5円どのロス率でも「貯めて使う」

損益分岐点は往復ロス約22.6%。31円の電気を24円で売るかどうかという比較なので、境目がこの数字になります。実測で報告されている30〜50%はこれを超え、カタログどおりの10〜20%なら下回ります。あなたの家がどちらに転ぶかは、住んでみるまで分かりません。だから私は、回収年数の代わりにこの22.6%を見ています。

言い換えると、新築で太陽光と同時にV2Hを入れても、最初の4年間はV2Hを働かせるほど損になりうる、ということです。もちろん、パワコンを通す段数を減らす構成でロスを20%以下に抑えられる場合や、昼間に必ず車が家にある暮らしなら、1〜4年目でも自家消費が勝ちます。V2Hが本当に効き始めるのは、単価が8.3円に落ちる5年目からです。

じゃあ最初の4年は、V2Hを使わないほうがいいってこと?
使わないほうがいい、というのとは少し違います。その4年ぶんのために、35年の借金をする理由がない、ということなんです。

「深夜の安い電気で充電」は、もう成立していない

太陽光を載せない家でV2Hを入れる場合、唯一の勝ち筋が「深夜に安く充電して、昼に使う」でした。その前提が壊れています。四国電力エリアの実際の契約プランで、深夜と昼間の単価はこう動いています。

時期深夜単価昼間単価
2022年13円/kWh25円/kWh12円
2023年26円/kWh37円/kWh11円
2026年4月29円/kWh36円/kWh7円

特定エリアの実例ですが、値上げの向きはどこも同じです。深夜29円で充電した電気を昼に使うときの実効単価は、29 ÷(1 − ロス率)で決まります。昼間の36円と並ぶのは、ロス率が約19%のとき。それを超えると、深夜に充電するほど損になります。実測で報告されている30〜50%は、この19%をはっきり超えています。

「V2Hは元が取れない」という声の多くは、ここから来ています。

📌 この章の要点
往復ロスが約22.6%を超えるなら、1〜4年目は「売る」ほうが得です。V2Hが本当に効き始めるのは、売電単価が8.3円へ落ちる5年目から。昼夜の単価差が7円まで縮んだいま、「深夜に充電して昼に使う」も成立しません。

その150万円は、35年かけて払うお金です

ここからは、V2Hという機械の話をいったん離れて、その150万円をどうやって払うのかを見ていきます。まだ見積書を見ていない方も、これから必ず通る話なので読んでおいてください。

見積書に「V2H充放電設備 一式」と書かれていたら

家づくりの打ち合わせには、決まった順番があります。土地の話をして、建物本体の話をして、そのあとに設備の話をする。金額の桁が、打ち合わせが進むごとに一つずつ下がっていく構造です。何千万円という数字を何度も見たあとに出てくる150万円は、感覚のうえでは「小さいほう」に分類されていきます。

打ち合わせがこの順番になるのは、工程上そうならざるを得ないからです。ただ、その順番が判断に何をもたらすかを、売る側は経験として知っています。私も知っていました。

白状すると、設備の話に入るころには、私自身も「あと150万くらいなら」という感覚になっていました。麻痺するのは、たいてい売る側が先です。あなたも、打ち合わせが始まってから、お金の感じ方が少し変わってきていませんか?

見積書への載り方も独特で、「V2H充放電設備 一式」。本体と工事費が分かれていないことは珍しくありませんし、その工事費に何が含まれ、現地調査のあとに何が増えるのかまで書かれた見積書は、まずありません。現地を見て初めて確定するのは、たとえばこのあたりです。

  • 駐車場から分電盤までの配線距離が10mを超えると +3〜5万円
  • 分電盤の容量不足・旧型なら交換や改修
  • スタンド型なら基礎の打設で +3〜8万円
  • 駐車場のコンクリートを斫(はつ)って地中配線、外壁の貫通部の防水補修

標準工事20〜30万円のつもりが、重なると40〜50万円に届きます。いま手元にある「一式」は、まだ確定していない金額です。

営業の側から見ると、オプション設備は「契約後の追加」です。仕様打ち合わせで積み上がった分はそのまま実績に乗り、値引き交渉のカードにもなる。設備の名前はオール電化から太陽光へ、いまは蓄電池とV2Hへと入れ替わってきましたが、売られ方の型はほとんど変わっていません。そう動くと評価される仕組みが先にあって、営業はその中で動いています。

「月々4,000円しか変わりませんよ」と言われたら

必ず出てくる説明です。そして、これは嘘ではありません。150万円を35年ローンに乗せると、変動1.3%で月4,447円、フラット35の3.29%でも月6,018円。計算は合っています。

では、その4,447円を35年払うと、総額でいくらになるのか。

借入に上乗せする額変動1.3%の利息総支払フラット35(3.29%)の利息総支払
100万円約24.5万円約124.5万円約68.5万円約168.5万円
150万円約36.8万円約186.8万円約102.8万円約252.8万円
200万円約49.0万円約249.0万円約137.0万円約337.0万円
※試算の前提は、返済期間35年・元利均等・繰上返済なし・金利変動なし。変動1.3%は2026年8月の実勢帯(0.93〜1.55%)の中央付近、フラット35の3.29%は同じ月の最低金利を使っています。

つまり、150万円のV2Hは、変動なら約187万円、フラット35なら約253万円の買い物です。この利息を計算に入れた回収シミュレーションを、私はまだ一度も見たことがありません。

同じ150万円でも、キッチンや断熱材なら35年間ずっと使えます。V2Hが違うのは、15年で機器が止まるのに、支払いだけが20年残るところです。

月4,000円くらいなら、うち払えるけどなあ。
払えるかどうかは、実はあまり問題じゃないんです。問題は、途中でやめられないこと。
やめられないって、途中で解約とかできないの?
できません。機器が止まっても、車を手放しても、そこから先も20年払い続けます。家に付いてくる借金なので、V2Hだけ切り離すことができないんですよ。20年という数字の理由は、次の項で書きますね。
V2Hと太陽光発電システムの元をとれるまでの期間をあらわしたイメージ図
※よくある「何年で元が取れる」という回収イメージ図です。この記事は、こうした図の前提そのものを疑っています(図に描かれた年数には、利息も交換費用も変換ロスも入っていません)。

この手の「何年で元が取れる」という図は、一度は見たことがあると思います。ただ、こういう図には利息も、交換費用も、変換ロスも入っていません。

15年後、機器は止まるのにローンは6〜7割残っている

カルタ

💰 不動産FPカルタの解説

設備の相談で私が最初に確認するのは、2つの数字です。その設備は何年で寿命が来るのか。そのお金は、何年かけて払うのか。

V2H機器の寿命は10〜15年。住宅ローンは35年。この2つの数字が並んだ時点で、話はほぼ終わっています。

V2H機器の実務上の寿命は10〜15年。太陽光のパワコンも同じくらいで交換時期が来ます。一方、150万円を35年で借りたときの、15年経過時点の残高がこちらです。

金利15年後の残高元本に対する残り
変動 1.3%約94万円63%
フラット35 3.29%約106万円70%

機器が止まる頃、その機器のローンはまだ6〜7割残っています。しかも、35年のローンが終わるまでに、V2Hは2回買い替える計算になります(15年目と30年目に交換するとして)。その2回分は、住宅ローンには乗りません。金利の高いリフォームローンか、現金です。最初の1台のローンを払い終える前に、2台目の代金を別枠で用意することになります。

「回収年数は約10年です」という数字が、どれだけ現実と噛み合っていないか。ここまでで伝わったでしょうか。

交換にいくらかかるかは、私は金額で断定しません。「交換」を明示した価格表が公開されていないからです。基礎・配管・配線を流用できるぶん、新設より工事費が下がるという指摘もあります。

借りられる枠は有限。その150万円は、断熱材から取っている

設備をローンに乗せるときに私が気にするのは、月々の返済額よりも借入枠のほうです。住宅ローンで借りられる額には、上限があります。

その枠を150万円ぶん設備に使うのは、断熱性能・耐震等級・そもそもの土地に使える枠が150万円減るということ。設備はあとから買えます。壁の中の断熱材と、家が建つ場所は、あとから買えません。

ハウスメーカーの営業だった頃、私は会社の方針で「借りられる限度額いっぱい」のローンを勧めていました。高い家を売りたかったからではありません。予算の天井を下げると、そのお客様はうちでは建てられなくなる。それが怖かったんです。その枠の中で何を買うかはお客様の自由だ、と当時は思っていた。

今は、順番が逆だったと思っています。枠は有限で、買い直せないものから埋めるべきだったんです。

月4,447円は、たしかに払えない額ではないと思います。ただ、この4,447円には解約ボタンがありません。設備は止まりますが、支払いは止まらない。そこが怖いんです。

📌 この章の要点
150万円のV2Hは、利息を入れると187万〜253万円。15年で機器が止まっても、ローンは6〜7割残ります。しかもその150万円は、断熱材や土地に使えたはずの借入枠から取っています。

「元が取れます」の紙は、誰が作っているのか

ここで誤解してほしくないのですが、「元が取れますよ」と説明する営業マンは、嘘をついていません。多くの営業は、自分が説明している数字を疑っていない。というより、疑うための材料が、そもそも本人にも渡されていないんです。

メーカーや本部の試算ツールに、屋根の向き・家族の人数・いまの電気代を入れると、それらしい紙が出てきます。営業がやっているのは、その入力までです。

あの試算に、入力欄がないもの

  • 充電と放電の往復で消える変換ロス
  • 住宅ローンの利息
  • 10〜15年後の交換費用
  • 電力会社の料金改定(昼夜の単価差の縮小)
  • FIT単価の改定(5年目の断崖)
  • 昼間、その車が家にあるかどうか
  • 家族が日中、家にいるかどうか

V2Hの損得を決める要素が、ほぼ全部、入力欄になっていません。代わりに入っているのは「標準的な4人家族」という、誰でもない人の使用パターンです。共働きで昼間は無人の家と、在宅勤務で昼に洗濯機と食洗機を回す家では結果が正反対になるのに、出てくる紙は同じ形をしています。

誰も答え合わせをしない

ここが、この構造のいちばんたちが悪いところです。この業界には、答え合わせの仕組みがありません。引き渡しから5年後に「あのシミュレーションどおりでしたか」と施主に聞いて回る会社があったら、私はむしろそこで家を建てたいくらいです。検証されないので、同じ試算が来年も再来年も使われ続けます。

お願いしたいことは、ひとつだけです。試算の紙をもらったら、金額ではなく前提を見てください。何kWhを、何円で、ロスを何%で計算したのか。そこが書かれていない紙は、営業資料だと思ってください。

前提って、どこに書いてあるの?
紙の隅か、裏面です。それらしい注意書きが見当たらなければ、その場で聞いてください。答えられない担当者なら、その紙はもう判断には使えません。

📌 この章の要点
試算表には、ロス・利息・交換費用・単価改定・車の在宅時間の入力欄がありません。見るべきは金額ではなく、前提が書いてあるかどうかです。

停電のとき、車で逃げるか、家に電気を残すか

災害時の「走る巨大蓄電池」としての安心感

ここまでは、ずっとお金の話でした。ただ、「停電が怖いから」という理由は、経済性の議論の外側にあります。安心のために払うお金は、回収年数では測れません。そこは否定しません。ただし、買う前に知っておくべき条件が2つあります。

200Vの家電が使えるのは、上位機種だけ

  • 特定負荷型:あらかじめ決めた回路にだけ給電。100Vのみで、IH・200Vエアコン・エコキュートは動きません。
  • 全負荷型:分電盤のほぼ全回路に給電し、200Vも使える。

同じメーカーの中でも、スタンダード機は放電3kW・100V・2回路限定、プレミアム機は放電6kW・200V全負荷、というように別物です。「V2Hがあれば停電も安心」は、機種を書かないと嘘になります。

機器メーカーの公式説明にも「不要な機器が電気を使い続けるとEVの残量が不足し、家の電気が使えなくなる」と明記されています。無条件に数日もつわけではありません。

家に給電した分だけ、逃げられる距離は短くなる

停電すると、急速充電器も家庭の充電も止まります。動けるのは、そのとき車に残っている残量の分だけ。真冬は航続距離が30〜40%落ちます。3日以上の長期停電になれば充電網の復旧待ちになり、携行缶で給油できるガソリン車との差が出ます。

「走る巨大蓄電池」は、走るのをやめている間だけ蓄電池なんですね。

停電したとき、車の電気って全部家に回していいの?
回した分だけ、走れる距離は減ります。両方取るには、ふだんから残量を多めに保っておくしかありません。
そんなの、毎日は気にしてられないよ。
たしかに、そこは正直むずかしいところです。しかも残量を多めに保つ運用は、余剰電力を目一杯出し入れして得をする経済性の運用と真逆になります。防災で買うなら防災で、と割り切ってもらったほうが、結果的に後悔は少ないです。

そして、防災を理由に買うなら、5年待つ意味はありません。ただしその場合に選ぶべきなのは全負荷型の上位機種で、価格は上がります。「安心のため」と「元を取るため」を一緒にすると、どちらの予算も足りなくなります。

防災が目的なら、避難の足と競合しない据置型のほうが素直ではないでしょうか。

📌 この章の要点
200V家電まで使えるのは全負荷型の上位機種だけ。家へ流した分だけ、逃げられる距離は減ります。防災目的なら、避難の足と競合しない据置型のほうが素直です。

V2Hと据置型の蓄電池、予算が1つ分ならどっち?

予算が1つ分しかないとき、どこで差がつくのか。表の「車がないと」「昼間に車が外出中は」の2行(色を付けた行)だけ見てもらえば十分です。

比較軸V2H据置型 家庭用蓄電池
総額(機器+標準工事)99〜160万円120〜160万円(7〜10kWh)
使える容量EV次第(軽EVで約20kWh/セダン級40〜62kWh/SUV級66〜91kWh)7〜10kWhが主流
車がないとただの箱単体で機能する
昼間に車が外出中は貯められない貯められる
停電時全負荷型なら200Vも可。ただし使うほど避難の足が減る家に据え置きなので、避難と競合しない
車の買い替えCHAdeMO対応車に縛られる無関係
国の補助金あり(要件が厳しく、先着・年度で変動)別制度あり(V2Hとの同時申請は原則不可)
寿命10〜15年10〜15年

日中に車が家にないなら、答えは据置型の蓄電池です

どうしても新築時に1つ買うなら、平日の日中に車が家にない共働き世帯に、迷う理由はありません。据置型の蓄電池です。理由はひとつ。V2Hの大容量は、車が家にある時間にしか使えないからです。

ただし、これも150万円級を35年で払う話であることは同じです。さきほどの2つの数字(寿命10〜15年、返済35年)は、据置型にもそのまま当てはまります。私が「据置型です」と言っているのは、新築時にどちらか1つを買うと決めた人への答えであって、蓄電池なら新築で買っていい、という話ではありません。

これに対して売り手が用意している解決策は、「家庭用蓄電池を併設すれば、昼の余剰を貯めて夜にEVへ回せます」というものです。解決策が「もう1つ買う」になっているわけです。総額はさらに120〜160万円増えます。

容量はV2Hのほうが全然大きいんでしょ?
大きいです。ただ、その大きい電池は、朝には家を出ていきます。
あ、そうか。昼にいっぱい発電してる時間なのに、肝心の電池が家にいないのか。
そうなんです。容量の話が効いてくるのは、車が昼に家にいる家庭だけなんです。

V2Hを買うということは、次の車をCHAdeMOの中から選ぶということ

日本のV2Hは、CHAdeMO(チャデモ)という急速充電の規格が前提です。対応車種は増えていますが、落とし穴があります。同じ車種名でも、年式やグレードで非対応なのです。

たとえば同じPHVでも、対応するのは2019〜22年式まで。後継モデルでは使えなくなりました。PHEVの中には、エンジンが始動している状態では充放電できないものもあります。軽EVに至っては、メーカーオプションの急速充電機能を付けた個体だけが対応。同じ車名で買ったのに、うちのは対応していなかった、が起こります。非対応の車を買ってしまうと、後付けの改造は事実上できません。

確認先は、V2H機器メーカーが公開している対応車種一覧です。車種名だけで判断せず、年式・グレード・オプションまで一致しているかを見てください。

独自規格を採用しているメーカーの車は、日本の一般的なV2H機器には基本的につながりません。さらに、NACSという別の規格を採用すると表明する国内メーカーが増えており、CHAdeMOの将来は不透明です(ただしNACS側の家庭給電まわりの仕様は策定途上で、いまのところV2Hの実力はCHAdeMOに分があります)。

規格の組み合わせが読めないことを示す実例もあります。800V系のバッテリーを積む車と、400V系設計のV2H機器を組み合わせたケースです。昇圧・降圧のたびに1〜2kW、ドライヤー1台分の電力が消えることが分かり、自動車メーカー自身が「V2H機能に関する不適切な表示」として購入者へ返金対応を公表しました。カタログを見ても分からないことがある、という証拠です。

つまりV2Hを買った日から、次の車選びには「CHAdeMO対応であること」という条件が1つ増えます。それが10年、15年続く。家の設備を買ったつもりが、車の買い方まで決まってしまうわけです。

そして据置型を選ぶなら、V2Hの空配管はやはり通しておいてください。5年後にEVを買ったとき、両方使える家になります。

カルタ

💰 不動産FPカルタの解説

V2Hを3年、走行3万km近くまで使ってバッテリーの健全度が87%前後、という追跡記録が出ています。劣化は1年目に大きく進み、そのあとは明らかにゆるやかになる。

ただ、FPとして気になるのは別のところです。V2Hの充放電が「急速充電」として1回ずつ数えられ、3年で2,700回近くに達したという報告があります。ケーブルを抜き差しした回数ではなく、電池とやりとりした回数で積み上がるためです。中古EVの査定でディーラーが見る項目には、この急速充電回数が含まれます。劣化していないのに、記録のうえでは劣化していそうに見える車になる。家の電気代を節約するために、車の資産価値のほうを削っていないか。試算表の外側で起きることなので、誰も計算してくれません。

📌 この章の要点
日中に車が家にないなら、答えは据置型です。V2Hを選ぶと、次の車もCHAdeMO対応の中から選ぶことになり、その条件が10年、15年ついて回ります。

いま「大丈夫」でも、5年後に条件が外れる

引き渡しの直後は、ほとんどの人が満足します。電気代が下がるからです。

ただ、それがV2Hのおかげとは限りません。アパートや実家から新築に移れば、断熱もエアコンも給湯器も全部新しくなっています。光熱費が下がるのは当たり前です。V2Hが効いているのか、それとも家そのものが良くなっただけなのか。この切り分けは、正直かなり面倒です。前の家の検針票を引っ張り出して、月ごとの使用量を並べて…となると、そこまでやりませんよね。だから最初の1〜2年は、まだ後悔として表に出てきません。

V2Hが成立する4つの条件は、生活のほうが先に変わる

V2Hが成立する条件は4つ。①EVがある ②太陽光がある ③昼間に車が家にある ④CHAdeMO対応車に乗り続ける。

設備は、契約した時点の生活を前提に選ばれます。ところが、生活のほうが家より先に変わります。育休中は昼に車が家にあった。復職したら、朝に出ていって夜まで帰ってこない。子どもの進学で送迎の型が変わる。転職で通勤距離が変わる。そして数年後には、車の買い替えが来ます。4つ全部が15年間続くという前提を、新築の打ち合わせの席で誰かが確認してくれることはありません。

しかも、自分が何もしなくても前提のほうが動きます。5年目のFITの断崖も、昼夜の単価差の縮小も、あなたの努力とは関係なく起こる変化です。動く前提の上に、35年の借金を乗せるのか。考えどころはそこです。

【チェックリスト】1つでも当てはまるなら、新築時の導入は見送りでいい

  • EVもPHEVも持っておらず、買う予定も具体的に決まっていない(→ 補助金の申請要件すら満たせない)
  • 平日の日中、車が通勤で家を離れる(→ 太陽光の余剰を貯められない。主機能が死ぬ)
  • 太陽光を載せる予定がない(→ 昼夜の単価差7円では、往復ロスに負ける)
  • 次に乗りたい車が決まっていて、それがCHAdeMO非対応
  • 停電時に200V機器(IH・エコキュート・200Vエアコン)を使いたいが、予算は廉価な機種しかない
  • 5年以内に転勤・住み替えの可能性がある(→ 補助金の保有義務は5年。処分には返納が伴う)
  • 見積書に「標準工事」としか書かれておらず、分電盤・配線距離・基礎の追加費用が確定していない
  • 建築スケジュールが詰まっていて、補助金の交付決定(1〜2か月)を待たずに発注する必要がある

いくつ当てはまりましたか?

1つでも当てはまるなら、いま本体を買う理由はありません。そして、1つも当てはまらなかった方こそ、5年後に現金で買える人です。どちらにしても、新築の打ち合わせでやることは同じなんです。

📌 この章の要点
V2Hが成立する4条件のうち、生活のほうが先に変わります。チェックリストに1つでも当てはまるなら、いま本体を買う理由はありません。

新築のときに買えなくなるのは、本体ではなく配管です

「今決めないと損だ」という感覚には、正しい理由も混ざっています。足場があるうち、壁を閉じる前、外構を打つ前。新築時にしかできない工事は、確かにあります。新築ならローンに乗せられて、あとから買えばリフォームローンで金利が上がるのも事実です。

新築のときに入れとかないと、あとから付けられないんじゃないの?
付けられなくなるのは配管だけです。本体は駐車場に置く箱ですからね。だから新築でやるべきなのは、空配管を通しておくことなんです。

V2Hの本体は、車を停める場所に置く機器です。屋根の上でもなければ、壁の中でもない。工事のタイミングに縛られるのは、家の中を通す配線と、それを通すための空配管のほうです。

ここを分けて説明する営業は、ほぼいません。分けて説明する動機が、売る側の誰にもないからです。本体と配管を分けた瞬間、その打ち合わせで決まるのは1〜3万円の工事になる。契約時の受注金額で評価される仕組みの中では、そこに時間を割く理由が生まれないんです。

いま頼むべきは「空配管3本」だけ(1〜3万円)

カルタ

💰 不動産FPカルタの解説

頼むもの:V2H用の28mmの空配管を3本(EVコンセントだけでいいなら1本)。
費用の目安:新築時に充電用の配線・配管を追加する費用は1万〜3万円程度
いつ:着工前の電気配線の打ち合わせまで。壁を閉じてからでは遅いです。
あわせて確認すること:駐車位置から分電盤までの最短ルートと距離/分電盤に空き回路があるか。

これをやっておかないと、あとから外壁の貫通や隠蔽配線のやり直しが必要になり、数万円で済んだはずの工事が跳ね上がります。

1〜3万円で、「5年後に買える状態」が手に入ります。150万円を35年かけて払う代わりに、今日できるのはこれです。

「補助金が出るうちに」と言われたときの考え方

補助金、いつまであるか分からないんでしょ?
その補助金、思っているより自由に使えないんです。

補助金でいちばん効いてくるのは、実は金額よりも条件のほうです。次の4つを見てください。

  • 交付決定日より前に発注・着工したら対象外。交付決定までは、不備がなくてもおおむね1〜2か月。
  • 処分制限期間(保有義務)は5年間。その間に売却・廃棄・譲渡をするには財産処分の承認手続きが必要で、残存期間に応じて返納します。
  • 先着で、予算に達した時点で早期終了。
  • EV・PHEV・FCVを保有しているか、発注済みであることが要件。車が先です。

新築の工程管理では、ここが落とし穴になります。交付決定を待てば着工が遅れ、工期を優先すれば補助金を落とす。「補助金があるから今」が成立するのは、工程と噛み合ったときだけです。それに補助金は、毎年、名前と金額を変えながら存在し続けてきました。5年後に何らかの制度がある可能性は十分にあります。

ZEHの補助金や投資回収の細かい話は、平屋のZEHは元が取れるのかにまとめました。

5年後にもう一度考えると、何が変わっているか

  • 売電単価が8.3円に落ちている(=自家消費の価値が上がっている。V2Hが有利になる側の変化です)
  • 機器の価格と性能、そのとき乗っている車、CHAdeMOとNACSの行方
  • そして何より、生活のパターンが確定している(共働きが続くのか、昼に車があるのか)

では、その150万円を5年後にどうやって払うのか。ここが気になると思います。5年後に買うなら、そのお金は現金か、機器の寿命に合った10〜15年のローンで払うことになります。35年に引き伸ばす必要がありません。金利は上がっても、払い終える前に機器が止まるという逆転は起きない。ローンの長さを設備の寿命に合わせられること自体が、待つことの利益です。

5年待って失うのは、「最初の4年間の自家消費メリット」です。ただ、それは先ほど見たとおり、ロス率次第でマイナスにもなりうる部分。いま買って確実に失うのは、利息と、断熱材に使えたはずの借入枠です。

平屋で建てるつもりなら、契約前の図面のうちに直せる失敗が6つあります。平屋の失敗は住んでから気づく!ハウスメーカーとの契約前に直せる6つもあわせてどうぞ。

すでに入れた方へ。やることは1つです。昼に車が家にある日は自家消費に回し、そうでない日は無理に出し入れしない。5年目に売電が8.3円へ落ちてからが、あなたの設備の本番です。

📌 この章の要点
新築でしかできないのは配管工事だけ。本体は5年後でも買えます。今日やるべきは、1〜3万円で「5年後に買える状態」を作っておくことです。

まとめ:V2Hは「買うか」ではなく「いつ買うか」

  • 入れた電気は、カタログで1〜2割、実測では3〜5割が消える
  • 太陽光の売電単価は5年目に24円→8.3円。V2Hが効き始めるのは、そこから
  • 150万円をローンに乗せると187万〜253万円。15年後、機器が止まってもローンは6〜7割残る
  • 新築時にどちらか1つ買うなら、日中に車が家にない家庭は据置型の蓄電池
  • 新築でやることは、空配管3本(1〜3万円)だけでいい

V2Hで後悔するかどうかは、商品の良し悪しではなく、「自分がその条件に当てはまるか」で決まります。当てはまらないのなら、今日やることは配管の相談だけで足ります。

とりあえず、配管だけお願いしてみる。本体は5年後に考えるよ。
はい、いまはそれで十分です。5年後、そのとき乗っている車と、そのときの電気代を見てから決めればいい話ですから。配管の相談だけは、壁を閉じる前に忘れずに!

私はV2Hを売っていません。だから「いまは買わないほうがいい」と書けます。
急かされずに決められる家づくりを、応援しています。

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元ハウスメーカー営業がつくった
「家づくりの道具」4点

家づくりは、ほとんどの人が一生に一度です。だから、会社の比べ方も、担当者への聞き方も、誰にも教わらないまま本番が始まります。
私が売る側にいたころ、「お客様がこれを持っていたら、話がまるで違ったのに」と思っていたものを、4つの道具にまとめました。

  • わが家のライフプランシート(Web)
    年齢と年収を入れて、建てたい価格帯(ローコスト・中堅・大手)を選ぶだけ。「わが家は、いくらまでの家なら無理なく建てられるのか」——その上限額が出ます。
  • 後悔しないハウスメーカー比較チェックシート(PDF)
    候補の会社を「5つのものさし」と「担当者チェック」で採点して、ご夫婦で見比べられる一枚です。
  • 同じ工法メーカー早見表(PDF)
    どの会社とどの会社が同じ工法どうしなのか、36社分の一覧。相見積もりの組み方が変わります。
  • 家づくり最新データシート(Web・毎年更新)
    坪単価の相場、保証年数、火災保険が下がる「省令準耐火」など、時間で変わる数字をまとめてあります。

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