この記事は、住宅に関する有益な情報をFPの視点でわかりやすくお届けすることを目的として作成しています。
この記事には広告が含まれます。
【PR】
こんにちは!このブログも10周年。
元ハウスメーカー、今不動産特化FPのカルタです!



「片流れにしたいけど、台風で飛ばないか心配」。屋根の形の話になると、こう聞かれることがあります。そして私を含め営業は、たいてい「寄棟のほうが台風には強いですよ」と返します。
じゃあ寄棟にするか。でも見た目は片流れがいいし、太陽光も片流れのほうがたくさん載るらしい。……そこで止まりますよね。屋根は一度載せたら、住んでいる間は変えられませんから。




先に結論を言います。台風への強さは、屋根の形では決まりません。建物にかかる風の力を計算する国の決まりに、「寄棟」「片流れ」で数値を変える欄が、そもそもないんです。
決まらないなら、好きな形を選んでいい。では何が飛びやすさを決めているのか。国の基準の数字で追いかけます。
🏠 この記事でわかること
- 「寄棟は台風に強い」の根拠と、国の告示に寄棟の欄がないこと
- 屋根材が飛ぶかを決めるのは、形ではなく場所・留め方・窓
- 片流れ+太陽光で取り返せる額(当サイトの試算で20年6万〜12万円)
- 屋根の形より先に見る浸水深と、「1.5階建て」の落とし穴
寄棟と片流れ、台風に強いのはどっち?


念のため形を確認しておくと、寄棟は4方向すべてに傾斜がある屋根、片流れは1方向だけに傾いた屋根です。平屋ではこの2つに、山形の切妻を加えた3つが候補になります。
そして、第一案の図面に載っているその形は、台風への強さを比べて選ばれたものではありません。決めているのは、その会社が作り慣れている形と、間取りを上から囲んだときの外周のかたちです。私が提案書を作っていた頃も同じでした。
まず、屋根の前に建物そのものの話をします。平屋が2階建てより風に強いのは本当ですが、差は1割強です。建物にかかる風の力の計算方法は、国土交通省の告示(=法律の細かい中身を大臣が決めて公表したもの)で決まっています。その1454号の式で計算すると、2階建ては平屋の1.077〜1.159倍。
ただし、この差は建てる場所で変わります。国は「まわりに風をさえぎるものがどれだけあるか」を地表面粗度区分としてⅠ〜Ⅳの4段階に分けていて、Ⅰが海沿いのようにさえぎるもののない土地、Ⅳが建物の密集した都市部です。まわりを建物に囲まれた区分Ⅳでは、平屋と2階建ての差はゼロになります。
表A:平屋と2階建てで、風の圧力はどれだけ違うか
| 地表面粗度区分 | 平屋 | 2階建て | 比 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ(極めて平坦) | 1,833 | 1,974 | 1.077倍 |
| Ⅱ(海岸線近傍等) | 1,233 | 1,377 | 1.117倍 |
| Ⅲ(通常の市街地) | 828 | 960 | 1.159倍 |
| Ⅳ(都市化が著しい) | 714 | 714 | 1.000倍 |
単位はN/m²。短辺7.28m・勾配4寸、軒高は平屋3.5m/2階建て6.5m、基準風速34m/sで告示1454号第1の式で計算。基準風速は地域ごとに国が定めるので、絶対値は地域で変わります。全国共通なのは平屋と2階建ての「比」です。
壁が受ける風は減りますが、そのぶん屋根は広くなります。
※屋根と外周が大きいと、メンテナンス費用にも効きます。


平屋と2階建て、老後に効くのは階段ではなく修繕費!30年の差は「どこまで数えるか」で消えます
「老後は平屋がラク」は本当か。効いてくるのは階段ではなく修繕費です。2024年4月の法改正で「平屋は足場代が浮く」という前提は崩れ、30年の修繕費は数える部位しだいで平屋と2階建ての優劣が入れ替わります。防蟻の回数と屋根の直し方、2つの前提を不動産FPが数字で解説します。
マイホームのイロハ国の告示に「寄棟」という欄はありません
営業が「寄棟のほうが強い」と言う理屈は、聞けばもっともです。寄棟は4方向に傾斜があるから、どの向きから風が来ても受け流せる。片流れは1枚の大きな斜面なので、端が持ち上げられやすい。私もそう説明していました。
では、国はどう決めているのか。屋根にかかる風の力は、引き算で出します。建物の外から押したり吸い上げたりする強さ(外圧係数)から、建物の中から押す強さ(内圧係数)を引く。
傘を思い浮かべてください。外から風が当たって布が押されるのが、外圧。風が下から入り込んで、バサッと裏返そうとするのが、内圧です。屋根が飛ぶかどうかは、この2つの綱引きで決まります。どちらもこの先、何度も出てきます。
このうち外圧係数を定めているのが告示1454号第3です。そして、勾配が同じなら切妻でも片流れでも同じ数値になっています。
表B:告示1454号 表3「切妻屋根面、片流れ屋根面及びのこぎり屋根面のCpe」
| 屋根勾配θ | 風上面(正) | 風上面(負) | 風下面 |
|---|---|---|---|
| 10度未満 | — | −1.0 | −0.5 |
| 10度 | 0 | −1.0 | −0.5 |
| 30度 | 0.2 | −0.3 | −0.5 |
| 45度 | 0.4 | 0 | −0.5 |
表の名前をそのまま写しました。
そして寄棟は、この表のどこにも出てきません。告示は「その他の形状は類似の形状の数値に準じる」と書くだけ。建築研究所も2013年に、寄棟の風力係数を”提案”しています。






🏠 元ハウスメーカー営業カルタの解説
「寄棟は四方向に風を逃がすから強い」。これ、私も使っていました。根拠を聞かれたことが一度もなかったので、疑いもしませんでした。実際に「寄棟にしたから風圧が何%減った」という計算書が出るわけではない。形を見たときの直感が定番トークとして定着しただけです。悪気ではなく、構造としてそうなります。
差がついているのは、形ではなく勾配でした
表Bを縦に読むと、勾配が緩いほど風上側の吸い上げが強い。緩い屋根は、風にとって平らな板に近いからです。逆に急な屋根は、風を斜面に沿って逃がします。
ここで屋根の傾きの数え方に触れておきます。屋根の傾きは「寸(すん)」で表し、水平に10進んだときに垂直へいくつ上がるかを指します。3寸なら10:3、4寸なら10:4で、数字が大きいほど急な屋根です。図面では屋根伏図に「4寸」「4/10」などと書いてあります。
住宅でよく使う勾配に当てはめると、3寸で−0.766、4寸で−0.587。差は1.304倍。たった1寸で3割違います。国が線を引いたのは、屋根の角度のほうでした。片流れが不利に見えるのは、外観をすっきり見せるために緩めに描かれるからです。お手元の図面には、何寸と書いてありますか。




じゃあ、屋根はどこから飛ぶ?
形で決まらないなら、何で決まるのか。国はちゃんと答えを持っています。
同じ1枚の屋根でも、場所によって2.16倍の差がある


屋根ふき材(瓦・金属板・スレートなど、屋根の一番外側に張る材料)が飛ぶかは、骨組みとは別の規定で決まります。施行令82条の5と告示1458号です。その表3は、屋根のどの位置かによって吸い上げる力の強さを−2.5から−5.4まで定めている。数字が大きいほど強く吸い上げられるという意味で、最大÷最小で2.16倍です。同じ1枚の紙でも、真ん中より角のほうがめくれやすいですよね。屋根も同じで、隅・軒先・棟のまわりは風が回り込むぶん、そこだけ強く吸い上げられます。屋根材が飛ぶかを決めているのは、屋根の”形”ではなく、屋根の”どこか”です。
もう1つは留め方。2022年1月1日施行の告示改正(昭和46年建設省告示第109号の改正)で、新築の瓦屋根はすべての瓦を1枚ずつ固定するガイドライン工法が基準になりました。きっかけは2019年の房総半島台風です。軒の出については国の告示に設計用の係数がまだなく、深い軒なら裏側の補強を図面で確認するしかありません。




窓が割れた瞬間、屋根にかかる力が変わります


窓が割れるきっかけは、風そのものより飛んでくる物です。そして窓が割れると、さきほどの内圧係数——建物の中から押す力——が変わります。告示1454号 表5では、窓が閉じたままの建物なら0および−0.2。ところが風上側の窓が割れて開放されると+0.6になる。さきほどの傘が裏返る瞬間が、家の中で起きているわけです。屋根に働く力は外からの力から内からの力を引いて出すので、外から吸い上げる力と、内から押し上げる力が同時にかかることになります。
屋根を守る一番の部品は、実は窓です。合わせガラスとシャッターですね。




「耐風等級2を取っておけば安心?」
耐風等級が守っているのは、家の骨組みです
耐風等級は、家の性能を国の決めたものさしで等級表示する制度(住宅性能表示制度)の項目のひとつで、正式名称は「耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)」。等級は1と2の2段階しかなく、2は建築基準法の1.2倍。評価を受けるかどうかは、建てる人が選ぶ任意の制度です。
大事なのは名前の後半です。屋根ふき材と外装材は、耐風等級の評価対象に入っていません。耐風等級が守っているのは、家の骨組みです。
耐風等級2を取っても、長期優良住宅にはなりません
長期優良住宅を認定するのは自治体(所管行政庁)です。その現在の認定基準では、項目は10項目(劣化対策・耐震性・省エネルギー対策など)。この10項目に、耐風等級は入っていません。求められているのは耐震性のほうです。税制優遇は実在しますが耐風等級とは無関係で、狙うなら耐震等級2以上を見ることになります。


🏠 元ハウスメーカー営業カルタの解説
なぜこの2つがくっついて聞こえるのか。性能の話は、そのままではお金の話に着地しないからです。等級を上げれば見積もりが上がり、「で、いくら高くなるんですか」と返ってくる。そこで手を伸ばす先が、補助金や減税という「取り返せる話」。営業を覚えるとき、みんなここを通ります。耐風等級2そのものは無駄ではありません。骨組みは確かに強くなる。
「でも片流れなら、太陽光がたくさん載るんでしょう?」




屋根屋さんは耐風の話をし、太陽光の会社は搭載量の話をする。両方を1枚のてんびんに載せる人がいない。なので、ここでは私が載せます。
南面に載る量は、当サイトの試算で4倍近く違います
延床30坪の平屋の南面搭載量は寄棟5.85kW/切妻10.53kW/片流れ22.23kW。ただし、この22.23kWは金額に直せません。太陽光の電気をいくらで買い取るかを国が決める仕組み(FIT)は、10kW未満と10kW以上で制度の区分そのものが変わるからです。住宅用の単価をそのまま当てはめて計算すると、実態とかけ離れた金額が出ます。
※何kWが載って何年で戻るかは、元の記事で出しています。


平屋×太陽光は8kWが最強?屋根の形で載る量は4倍近く変わり、増やした4kWは20年で94%しか戻りません
平屋に太陽光8kWは載るのか。決めるのは屋根の広さではなく形です。同じ延床30坪でも、南を向いた一枚の面に載るのは寄棟で5.85kW、片流れで22.23kW。前提を全部開示した自前計算で、増やした4kW分が何年で戻るかまで数字で示します。
マイホームのイロハそれでも、20年で変わるのは6万〜12万円です
表C:屋根の形で太陽光の収入はどれだけ変わるか(当サイトの試算)
| 比べ方 | 20年間の差(片流れ − 寄棟) |
|---|---|
| 同じ8kWを載せる | 8.7万〜11.6万円 |
| 10kW未満の枠いっぱい(片流れ9.90kW/寄棟8.19kW・増設費49.4万円を差引後) | 6.3万〜9.5万円 |
年間発電1,100kWh/kW(南面)、東西面はその80〜85%、自家消費31円/kWhで年1,320kWh固定、売電は1〜4年目24円/5〜10年目8.3円/11年目以降10.0円、システム費用28.9万円/kW。
屋根の形で変わるのは、20年で6万〜12万円です。自家消費に回る分(31円)はどちらも同じで、差が出るのは売電分だけ。その単価が5年目から8.3円に落ちるからです。
片流れの耐風補強(下地の増し打ちや補強金物)の費用は、見積もりを取るまで誰にも言えません。意匠で片流れを選ぶのは構いません。ただ「太陽光で得だから」が理由なら、桁は先に知っておいてください。
※見た目で迷っているなら → 切妻屋根の記事
屋根の形より先に、その土地の「水」を見る


平屋には、上の階へ逃げるという選択肢がありません。生活空間も家財も1階で、上へ逃がす先がない。見るのは色の有無より、何メートルと書いてあるかです。国土交通省の「川の防災情報」は、一般の家屋では浸水深50cm以上で床上浸水のおそれとしています。ハザードマップの色は0.5mから。色が付いた時点で、床上浸水があり得る高さです。
土地を売る不動産会社が契約前にする重要事項説明は、ハザードマップ上の所在地を示すところまで。一方でハウスメーカーの営業は、土地の契約が流れれば建物契約も消えるので、言わないほうが仕事は前に進みます。私が現場にいた頃から、ここは変わっていません。この土地でいいのかを判断する材料は、施主が自分で取りに行くしかない。
基礎を20cm上げても、守れるのは浸水深0.75mまで
高基礎は、ハウスメーカーの土俵で完結するぶん打ち合わせで通りやすい打ち手です。
仮に床面の高さが55cm(基礎40cm+土台等15cm)なら、持ちこたえるのは0.55mまで。国が目安にする50cmとの差は5cmしかありません。ここに+20cmして、守れるようになるのは浸水深0.75mまでです。色が付く「0.5〜3.0m」の幅では下から10%だけ。高さは仕様で変わるので、仕様書で確認を。効果はあります。でも、”これで安心”ではない。
平屋はエコキュートもパワコンも室外機も全部1階の地上面。「架台のかさ上げも図面に」と、こちらから先に言うのが確実です。なお、屋根が飛んだときの風災は火災保険の基本補償で外せません。あなたが選ぶのは水災だけです。
1.5階建ては「収納」として提案されます
屋根裏に「+0.5階」を作る設計です。カタログでの紹介はロフトや納戸で、垂直避難とつなげて説明されることはまずありません。
天井までの高さ1.4m以下・その階の床面積の1/2未満なら、床面積にも階数にも算入しない取扱いです。上り下りを固定階段にしたときに認めるかどうかは、自治体で判断が分かれます。
「延床に入らないからお得」で止めないでください。基礎と屋根は減っても、階段・外壁・構造の検討が増えます。




まとめ:台風は形では決まらない。太陽光で変わるのは載る量
- 国の告示は切妻と片流れを同じ表で扱い、寄棟は表にない
- 差がついているのは形ではなく勾配(3寸と4寸で1.304倍)
- 屋根材が飛ぶかを決めるのは、場所と留め方と窓
- 耐風等級2は骨組みの等級。屋根ふき材は対象外、長期優良住宅にもならない
- 片流れ+太陽光で取り返せるのは、当サイトの試算で20年6万〜12万円
- 土地に色が付いているなら、屋根の形より先にそちらを見る
提案書のあの屋根は、会社の標準と間取りの外形で決まっていました。決め手が形にないのなら、あなたは好きな形を選んでいい。
選ぶ基準は暮らし方です。片流れは雨も雨だれ跡も低い側の一辺に集まり、屋根が下りてくる側の部屋は天井が低くなる。寄棟は面が増えるぶん、板金の接合部が増えます。
打ち合わせに持ち込むのは、この3つ。「勾配は何寸ですか」「屋根の端はどう留めてありますか」「窓はどう守りますか」。これを聞かれると、作り手は姿勢を正します。あなたの家づくりが納得のいく形で進むよう、応援しています。
\ メール登録だけ・ぜんぶ無料 /
元ハウスメーカー営業がつくった
「家づくりの道具」4点
家づくりは、ほとんどの人が一生に一度です。だから、会社の比べ方も、担当者への聞き方も、誰にも教わらないまま本番が始まります。
私が売る側にいたころ、「お客様がこれを持っていたら、話がまるで違ったのに」と思っていたものを、4つの道具にまとめました。
- わが家のライフプランシート(Web)
年齢と年収を入れて、建てたい価格帯(ローコスト・中堅・大手)を選ぶだけ。「わが家は、いくらまでの家なら無理なく建てられるのか」——その上限額が出ます。 - 後悔しないハウスメーカー比較チェックシート(PDF)
候補の会社を「5つのものさし」と「担当者チェック」で採点して、ご夫婦で見比べられる一枚です。 - 同じ工法メーカー早見表(PDF)
どの会社とどの会社が同じ工法どうしなのか、36社分の一覧。相見積もりの組み方が変わります。 - 家づくり最新データシート(Web・毎年更新)
坪単価の相場、保証年数、火災保険が下がる「省令準耐火」など、時間で変わる数字をまとめてあります。
登録は無料です。しつこい売り込みはしません。配信はいつでも1クリックで解除できます。
ご登録いただいたメールアドレスは、特典のお届けと家づくりに役立つ情報の配信にのみ使用します。ご登録の前にプライバシーポリシーをご確認ください。






コメント Comments
コメント一覧
コメントはありません。
トラックバックURL
https://117gift.com/hiraya-typhoon-measure/trackback/