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平屋の屋根、台風に強いのは寄棟?片流れ?…実は、形で決まらない!

平屋の屋根、台風に強いのは寄棟?片流れ?…実は、形で決まらない!

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「片流れにしたいけど、台風で飛ばないか心配」。屋根の形の話になると、こう聞かれることがあります。そして私を含め営業は、たいてい「寄棟のほうが台風には強いですよ」と返します。

じゃあ寄棟にするか。でも見た目は片流れがいいし、太陽光も片流れのほうがたくさん載るらしい。……そこで止まりますよね。屋根は一度載せたら、住んでいる間は変えられませんから。

屋根の形、寄棟と片流れどっちがいいの?営業さんは寄棟推しなんだけど。

迷いますよね。その二択、決め手はどちらの形でもないんです。

先に結論を言います。台風への強さは、屋根の形では決まりません。建物にかかる風の力を計算する国の決まりに、「寄棟」「片流れ」で数値を変える欄が、そもそもないんです。

決まらないなら、好きな形を選んでいい。では何が飛びやすさを決めているのか。国の基準の数字で追いかけます。

🏠 この記事でわかること

  • 「寄棟は台風に強い」の根拠と、国の告示に寄棟の欄がないこと
  • 屋根材が飛ぶかを決めるのは、形ではなく場所・留め方・窓
  • 片流れ+太陽光で取り返せる額(当サイトの試算で20年6万〜12万円)
  • 屋根の形より先に見る浸水深と、「1.5階建て」の落とし穴

💡 屋根の形を決める前に、平屋そのもので後悔しないために。
住んでから気づく平屋の失敗は、そのほとんどが契約前の図面で直せます。

平屋の失敗6つ:契約の前 全部直せる

👉平屋の失敗は住んでから気づく!ハウスメーカーとの契約前に直せる6つ

寄棟と片流れ、台風に強いのはどっち?

平屋の屋根の形を比較する図

念のため形を確認しておくと、寄棟は4方向すべてに傾斜がある屋根、片流れは1方向だけに傾いた屋根です。平屋ではこの2つに、山形の切妻を加えた3つが候補になります。

そして、第一案の図面に載っているその形は、台風への強さを比べて選ばれたものではありません。決めているのは、その会社が作り慣れている形と、間取りを上から囲んだときの外周のかたちです。私が提案書を作っていた頃も同じでした。

まず、屋根の前に建物そのものの話をします。平屋が2階建てより風に強いのは本当ですが、差は1割強です。建物にかかる風の力の計算方法は、国土交通省の告示(=法律の細かい中身を大臣が決めて公表したもの)で決まっています。その1454号の式で計算すると、2階建ては平屋の1.077〜1.159倍。

ただし、この差は建てる場所で変わります。国は「まわりに風をさえぎるものがどれだけあるか」を地表面粗度区分としてⅠ〜Ⅳの4段階に分けていて、Ⅰが海沿いのようにさえぎるもののない土地、Ⅳが建物の密集した都市部です。まわりを建物に囲まれた区分Ⅳでは、平屋と2階建ての差はゼロになります。

表A:平屋と2階建てで、風の圧力はどれだけ違うか

地表面粗度区分平屋2階建て比
Ⅰ(極めて平坦)1,8331,9741.077倍
Ⅱ(海岸線近傍等)1,2331,3771.117倍
Ⅲ(通常の市街地)8289601.159倍
Ⅳ(都市化が著しい)7147141.000倍

単位はN/m²。短辺7.28m・勾配4寸、軒高は平屋3.5m/2階建て6.5m、基準風速34m/sで告示1454号第1の式で計算。基準風速は地域ごとに国が定めるので、絶対値は地域で変わります。全国共通なのは平屋と2階建ての「比」です。

壁が受ける風は減りますが、そのぶん屋根は広くなります。

※屋根と外周が大きいと、メンテナンス費用にも効きます。

平屋と2階建て、老後に効くのは階段ではなく修繕費!30年の差は「どこまで数えるか」で消えます

「老後は平屋がラク」は本当か。効いてくるのは階段ではなく修繕費です。2024年4月の法改正で「平屋は足場代が浮く」という前提は崩れ、30年の修繕費は数える部位しだいで平屋と2階建ての優劣が入れ替わります。防蟻の回数と屋根の直し方、2つの前提を不動産FPが数字で解説します。

マイホームのイロハ

国の告示に「寄棟」という欄はありません

営業が「寄棟のほうが強い」と言う理屈は、聞けばもっともです。寄棟は4方向に傾斜があるから、どの向きから風が来ても受け流せる。片流れは1枚の大きな斜面なので、端が持ち上げられやすい。私もそう説明していました。

では、国はどう決めているのか。屋根にかかる風の力は、引き算で出します。建物の外から押したり吸い上げたりする強さ(外圧係数)から、建物の中から押す強さ(内圧係数)を引く。

傘を思い浮かべてください。外から風が当たって布が押されるのが、外圧。風が下から入り込んで、バサッと裏返そうとするのが、内圧です。屋根が飛ぶかどうかは、この2つの綱引きで決まります。どちらもこの先、何度も出てきます。

このうち外圧係数を定めているのが告示1454号第3です。そして、勾配が同じなら切妻でも片流れでも同じ数値になっています。

表B:告示1454号 表3「切妻屋根面、片流れ屋根面及びのこぎり屋根面のCpe」

屋根勾配θ風上面(正)風上面(負)風下面
10度未満—−1.0−0.5
10度0−1.0−0.5
30度0.2−0.3−0.5
45度0.40−0.5

表の名前をそのまま写しました。

そして寄棟は、この表のどこにも出てきません。告示は「その他の形状は類似の形状の数値に準じる」と書くだけ。建築研究所も2013年に、寄棟の風力係数を”提案”しています。

営業さん、寄棟は風に強いって言ってたけど、嘘なの?

嘘ではありません。ただ、確かめた人がいないだけなんです。

カルタ

🏠 元ハウスメーカー営業カルタの解説

「寄棟は四方向に風を逃がすから強い」。これ、私も使っていました。根拠を聞かれたことが一度もなかったので、疑いもしませんでした。実際に「寄棟にしたから風圧が何%減った」という計算書が出るわけではない。形を見たときの直感が定番トークとして定着しただけです。悪気ではなく、構造としてそうなります。

差がついているのは、形ではなく勾配でした

表Bを縦に読むと、勾配が緩いほど風上側の吸い上げが強い。緩い屋根は、風にとって平らな板に近いからです。逆に急な屋根は、風を斜面に沿って逃がします。

ここで屋根の傾きの数え方に触れておきます。屋根の傾きは「寸(すん)」で表し、水平に10進んだときに垂直へいくつ上がるかを指します。3寸なら10:3、4寸なら10:4で、数字が大きいほど急な屋根です。図面では屋根伏図に「4寸」「4/10」などと書いてあります。

住宅でよく使う勾配に当てはめると、3寸で−0.766、4寸で−0.587。差は1.304倍。たった1寸で3割違います。国が線を引いたのは、屋根の角度のほうでした。片流れが不利に見えるのは、外観をすっきり見せるために緩めに描かれるからです。お手元の図面には、何寸と書いてありますか。

じゃあ片流れでも4寸にすれば同じってこと?

計算上は、まったく同じです。

じゃあ、屋根はどこから飛ぶ?

形で決まらないなら、何で決まるのか。国はちゃんと答えを持っています。

同じ1枚の屋根でも、場所によって2.16倍の差がある

平屋と風のメカニズム

屋根ふき材(瓦・金属板・スレートなど、屋根の一番外側に張る材料)が飛ぶかは、骨組みとは別の規定で決まります。施行令82条の5と告示1458号です。その表3は、屋根のどの位置かによって吸い上げる力の強さを−2.5から−5.4まで定めている。数字が大きいほど強く吸い上げられるという意味で、最大÷最小で2.16倍です。同じ1枚の紙でも、真ん中より角のほうがめくれやすいですよね。屋根も同じで、隅・軒先・棟のまわりは風が回り込むぶん、そこだけ強く吸い上げられます。屋根材が飛ぶかを決めているのは、屋根の”形”ではなく、屋根の”どこか”です。

もう1つは留め方。2022年1月1日施行の告示改正(昭和46年建設省告示第109号の改正)で、新築の瓦屋根はすべての瓦を1枚ずつ固定するガイドライン工法が基準になりました。きっかけは2019年の房総半島台風です。軒の出については国の告示に設計用の係数がまだなく、深い軒なら裏側の補強を図面で確認するしかありません。

瓦と金属、どっちが飛びにくいの?

今の新築なら、瓦も金属も留め方に基準があります。昔は瓦の端のほうだけ留めれば済みましたが、今は全数です。金属で見るのはビスのピッチですね。

窓が割れた瞬間、屋根にかかる力が変わります

防犯用合わせガラスの窓と高強度シャッター

窓が割れるきっかけは、風そのものより飛んでくる物です。そして窓が割れると、さきほどの内圧係数——建物の中から押す力——が変わります。告示1454号 表5では、窓が閉じたままの建物なら0および−0.2。ところが風上側の窓が割れて開放されると+0.6になる。さきほどの傘が裏返る瞬間が、家の中で起きているわけです。屋根に働く力は外からの力から内からの力を引いて出すので、外から吸い上げる力と、内から押し上げる力が同時にかかることになります。

屋根を守る一番の部品は、実は窓です。合わせガラスとシャッターですね。

シャッター閉めるだけでも意味あるの?

あります。前提が”閉じた建物”のままでいられるか、という話ですから。

「耐風等級2を取っておけば安心?」

耐風等級が守っているのは、家の骨組みです

耐風等級は、家の性能を国の決めたものさしで等級表示する制度(住宅性能表示制度)の項目のひとつで、正式名称は「耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)」。等級は1と2の2段階しかなく、2は建築基準法の1.2倍。評価を受けるかどうかは、建てる人が選ぶ任意の制度です。

大事なのは名前の後半です。屋根ふき材と外装材は、耐風等級の評価対象に入っていません。耐風等級が守っているのは、家の骨組みです。

耐風等級2を取っても、長期優良住宅にはなりません

長期優良住宅を認定するのは自治体(所管行政庁)です。その現在の認定基準では、項目は10項目(劣化対策・耐震性・省エネルギー対策など)。この10項目に、耐風等級は入っていません。求められているのは耐震性のほうです。税制優遇は実在しますが耐風等級とは無関係で、狙うなら耐震等級2以上を見ることになります。

カルタ

🏠 元ハウスメーカー営業カルタの解説

なぜこの2つがくっついて聞こえるのか。性能の話は、そのままではお金の話に着地しないからです。等級を上げれば見積もりが上がり、「で、いくら高くなるんですか」と返ってくる。そこで手を伸ばす先が、補助金や減税という「取り返せる話」。営業を覚えるとき、みんなここを通ります。耐風等級2そのものは無駄ではありません。骨組みは確かに強くなる。

「でも片流れなら、太陽光がたくさん載るんでしょう?」

南向きの片流れなら、屋根代くらい元が取れるんじゃない?

載る量が増えるのは本当です。ただ、増えた分の売電単価が8.3円です。

屋根屋さんは耐風の話をし、太陽光の会社は搭載量の話をする。両方を1枚のてんびんに載せる人がいない。なので、ここでは私が載せます。

南面に載る量は、当サイトの試算で4倍近く違います

延床30坪の平屋の南面搭載量は寄棟5.85kW/切妻10.53kW/片流れ22.23kW。ただし、この22.23kWは金額に直せません。太陽光の電気をいくらで買い取るかを国が決める仕組み(FIT)は、10kW未満と10kW以上で制度の区分そのものが変わるからです。住宅用の単価をそのまま当てはめて計算すると、実態とかけ離れた金額が出ます。

※何kWが載って何年で戻るかは、元の記事で出しています。

それでも、20年で変わるのは6万〜12万円です

表C:屋根の形で太陽光の収入はどれだけ変わるか(当サイトの試算)

比べ方20年間の差(片流れ − 寄棟)
同じ8kWを載せる8.7万〜11.6万円
10kW未満の枠いっぱい(片流れ9.90kW/寄棟8.19kW・増設費49.4万円を差引後)6.3万〜9.5万円

年間発電1,100kWh/kW(南面)、東西面はその80〜85%、自家消費31円/kWhで年1,320kWh固定、売電は1〜4年目24円/5〜10年目8.3円/11年目以降10.0円、システム費用28.9万円/kW。

屋根の形で変わるのは、20年で6万〜12万円です。自家消費に回る分(31円)はどちらも同じで、差が出るのは売電分だけ。その単価が5年目から8.3円に落ちるからです。

片流れの耐風補強(下地の増し打ちや補強金物)の費用は、見積もりを取るまで誰にも言えません。意匠で片流れを選ぶのは構いません。ただ「太陽光で得だから」が理由なら、桁は先に知っておいてください。

※見た目で迷っているなら → 切妻屋根の記事

屋根の形より先に、その土地の「水」を見る

平屋は台風時の水害に弱い

平屋には、上の階へ逃げるという選択肢がありません。生活空間も家財も1階で、上へ逃がす先がない。見るのは色の有無より、何メートルと書いてあるかです。国土交通省の「川の防災情報」は、一般の家屋では浸水深50cm以上で床上浸水のおそれとしています。ハザードマップの色は0.5mから。色が付いた時点で、床上浸水があり得る高さです。

土地を売る不動産会社が契約前にする重要事項説明は、ハザードマップ上の所在地を示すところまで。一方でハウスメーカーの営業は、土地の契約が流れれば建物契約も消えるので、言わないほうが仕事は前に進みます。私が現場にいた頃から、ここは変わっていません。この土地でいいのかを判断する材料は、施主が自分で取りに行くしかない。

基礎を20cm上げても、守れるのは浸水深0.75mまで

高基礎は、ハウスメーカーの土俵で完結するぶん打ち合わせで通りやすい打ち手です。

仮に床面の高さが55cm(基礎40cm+土台等15cm)なら、持ちこたえるのは0.55mまで。国が目安にする50cmとの差は5cmしかありません。ここに+20cmして、守れるようになるのは浸水深0.75mまでです。色が付く「0.5〜3.0m」の幅では下から10%だけ。高さは仕様で変わるので、仕様書で確認を。効果はあります。でも、”これで安心”ではない。

平屋はエコキュートもパワコンも室外機も全部1階の地上面。「架台のかさ上げも図面に」と、こちらから先に言うのが確実です。なお、屋根が飛んだときの風災は火災保険の基本補償で外せません。あなたが選ぶのは水災だけです。

1.5階建ては「収納」として提案されます

屋根裏に「+0.5階」を作る設計です。カタログでの紹介はロフトや納戸で、垂直避難とつなげて説明されることはまずありません。

天井までの高さ1.4m以下・その階の床面積の1/2未満なら、床面積にも階数にも算入しない取扱いです。上り下りを固定階段にしたときに認めるかどうかは、自治体で判断が分かれます。

「延床に入らないからお得」で止めないでください。基礎と屋根は減っても、階段・外壁・構造の検討が増えます。

じゃあ1.5階建てにすれば、平屋でも逃げられるんだね?

使えます。ただ、そのつもりなら、図面より先に自治体の窓口です。

まとめ:台風は形では決まらない。太陽光で変わるのは載る量

  • 国の告示は切妻と片流れを同じ表で扱い、寄棟は表にない
  • 差がついているのは形ではなく勾配(3寸と4寸で1.304倍)
  • 屋根材が飛ぶかを決めるのは、場所と留め方と窓
  • 耐風等級2は骨組みの等級。屋根ふき材は対象外、長期優良住宅にもならない
  • 片流れ+太陽光で取り返せるのは、当サイトの試算で20年6万〜12万円
  • 土地に色が付いているなら、屋根の形より先にそちらを見る

提案書のあの屋根は、会社の標準と間取りの外形で決まっていました。決め手が形にないのなら、あなたは好きな形を選んでいい。

選ぶ基準は暮らし方です。片流れは雨も雨だれ跡も低い側の一辺に集まり、屋根が下りてくる側の部屋は天井が低くなる。寄棟は面が増えるぶん、板金の接合部が増えます。

打ち合わせに持ち込むのは、この3つ。「勾配は何寸ですか」「屋根の端はどう留めてありますか」「窓はどう守りますか」。これを聞かれると、作り手は姿勢を正します。あなたの家づくりが納得のいく形で進むよう、応援しています。

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元ハウスメーカー営業がつくった
「家づくりの道具」4点

家づくりは、ほとんどの人が一生に一度です。だから、会社の比べ方も、担当者への聞き方も、誰にも教わらないまま本番が始まります。
私が売る側にいたころ、「お客様がこれを持っていたら、話がまるで違ったのに」と思っていたものを、4つの道具にまとめました。

  • わが家のライフプランシート(Web)
    年齢と年収を入れて、建てたい価格帯(ローコスト・中堅・大手)を選ぶだけ。「わが家は、いくらまでの家なら無理なく建てられるのか」——その上限額が出ます。
  • 後悔しないハウスメーカー比較チェックシート(PDF)
    候補の会社を「5つのものさし」と「担当者チェック」で採点して、ご夫婦で見比べられる一枚です。
  • 同じ工法メーカー早見表(PDF)
    どの会社とどの会社が同じ工法どうしなのか、36社分の一覧。相見積もりの組み方が変わります。
  • 家づくり最新データシート(Web・毎年更新)
    坪単価の相場、保証年数、火災保険が下がる「省令準耐火」など、時間で変わる数字をまとめてあります。

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