この記事は、住宅に関する有益な情報をFPの視点でわかりやすくお届けすることを目的として作成しています。
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こんにちは!このブログも10周年。
元ハウスメーカー、今不動産特化FPのカルタです!



「老後を考えるなら、やっぱり平屋だよね」。打ち合わせで必ず一度は出てくる言葉です。階段の上り下りがない。ワンフロアで生活が完結する。雨樋の詰まりも、歳をとってから自分の目で見に行ける。


嘘ではありません。どれも本当のことです。正しいから、そこで話が止まってしまう。
営業をしていた頃の私にとって、「老後」は打ち合わせを前に進めてくれる便利な言葉でした。価格でも仕様でもないので、誰も反対しない。反対されない提案は、売る側にありがたい提案なんです。だから私は、老後だけを理由に家の形を決める人の手を、いったん止めてもらいます。




先に、この記事の結論を置いておきます。
老後に効いてくるのは、階段ではなく修繕費です。そして平屋と2階建ての修繕費は、どこまで数えるかで、どちらが高いかが入れ替わります。決めるべきは平屋か2階建てかではなく、シロアリの再処理を何回やるかと30年目の屋根をどう直すかの2つ。平屋をやめろ、という話ではありません。
🏠 この記事でわかること
- 「老後は平屋がラク」がどこまで本当で、どこから違うのか
- 「平屋なら足場代が浮く」が2024年4月の改正で崩れた理由
- 30年の修繕費を、有利な部位と不利な部位の両方から数えた表
- 前提を2つ動かすだけで、その差が消えること
💡 30年後の修繕費の前に、平屋そのもので後悔しないために。
住んでから気づく平屋の失敗は、そのほとんどが契約前の図面で直せます。


目次[閉じる]
老後にケガをするのは、階段ではなく寝室です


東京消防庁が令和6年に集計した、住宅の中でころんで運ばれた高齢者は39,053人。そのうち29,783人——およそ4分の3が、階段ではなく居室・寝室で転んでいます。発生場所の上位5つは、居室・寝室、玄関・勝手口、廊下、トイレ・洗面所、台所。階段は、5つの中に入っていません。
東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(令和6年中)の集計です。
階段をなくせば、階段の事故は減ります。そこは否定しません。ただ、階段をなくして消えるのは、家庭内の事故のうちの一部だけです。残りは平屋にもそのまま残ります。効いているのは、床の段差と手すり、動線と照明のほうなんです。




使えるのは手すり・段差の解消・床材・扉・便器まで。上限は要介護度にかかわらず総額20万円で、これは工事費の上限です。戻るのはその7〜9割。20万円が支給されるわけではありません。階段昇降機は対象外で、自己負担は数十万円から百万円台です。
外壁と屋根の更新には、そういう全国共通の仕組みがありません。自治体の助成が使えることはありますが、金額も条件も住む場所しだい。屋根と外壁の更新は原則自腹で、年金で暮らしている時期に一度は来ます。




📌 この章の要点
階段をなくしても、家の中でケガをする場所のほうは残ります。介護の工事には20万円の枠がありますが、屋根と外壁の更新に効く全国共通の制度はありません。
「平屋なら足場代が浮きますよ」が、いちばん苦しい営業トークです


まず、平屋でも足場は組みます。高さが2mを超える作業には作業床が要ると決まっていて、平屋の軒の高さは3m前後。外壁塗装も屋根の補修も、この高さを超えます。


2024年4月から、もう一つルールが加わりました。幅が1メートル以上の箇所で足場を使うときは、原則として本足場を使う。起点は建物の外面からの水平距離で、高さは条件に入っていません。狭い敷地向けの一側足場が流用され、事故が起きていたことへの対応です。
敷地に余裕のある平屋のほうが、むしろ本足場になりやすい。あとで出す表の足場代も、両方とも本足場で計算しました。効くのは金額の差ではなく、浮くはずだった費用が浮かないことのほうです。




なぜこの話が打ち合わせで出てこないのか。施主が屋根を見ないからです。外壁は毎日目に入りますが、自分の家の屋根って、上がって見たことないですよね。見積書にも「屋根塗装 一式」としか出てきません。
住宅営業が評価されるのは、契約した棟数です。私が毎月見ていた成績表に、30年後の屋根代を書く欄はありませんでした。落としていたのは、私も同じです。
ただし、足場と外壁そのものは2階建てのほうが広い。床面積を半分にしても、外周は半分にならないからです。外壁は平屋の1.41倍、足場は1.36倍でした。
📌 この章の要点
2024年4月に条件になったのは高さではなく、建物のまわりの1mの余地です。浮くはずだった足場代は、浮きません。
30年でどっちが高いかは、どこまで数えるかで決まります
片方だけ数えれば、どちらの結論も作れます
同じ延床で比べると、平屋は屋根と基礎が広く、2階建ては外壁と足場が広い。どちらも事実です。片方だけを数えれば、どちらが高いという記事も書けてしまう。
この記事にも以前の版があります。平屋に不利な部位だけを数えていたのは、私です。両方を並べ直しました。表は、小計の2行だけ見てください。
| 部位 | 30年での回数 | 平屋 − 2階建て | 安いのは |
|---|---|---|---|
| 足場 | 2回 | −8.9万円 | 平屋 |
| 外壁塗装 | 2回 | −24.7万円 | 平屋 |
| ベランダ防水 | 2回(2階建てのみ) | −20.0万円 | 平屋 |
| 小計(平屋が有利な側) | −53.7万円 | 平屋が53.7万円得 | |
| 屋根塗装 | 築15年に1回 | +14.8万円 | 2階建て |
| 屋根カバー工法 | 築30年に1回 | +56.1万円 | 2階建て |
| 防蟻処理 | 5年ごと6回 | +63.0万円 | 2階建て |
| 小計(平屋が不利な側) | +133.9万円 | 平屋が133.9万円損 | |
| 合計 | +80.2万円(月2,228円) | 2階建て |
有利な側も小さくありません。外壁と足場、それにベランダのない分。平屋は屋根とシロアリの勝負が始まる前に、53.7万円リードしています。
不利な側でいちばん効くのが防蟻です。シロアリの防蟻処理は、延床ではなく「1階の床面積」で見積もられます。同じ延床30坪なら、平屋はまるまる倍の面積を薬剤で処理する。ここ、見積書を何枚並べても出てきません。ご存じでしたか。ただし面積が倍でも費用は倍になりません。面積に比例しない固定費が入るからです。
防蟻の回数と屋根の直し方で、答えの向きが変わります
動かす前提は2つ。防蟻を30年で何回やるか。築30年の屋根を、カバー工法(今の屋根に新しい屋根材をかぶせる直し方)にするか、塗装で回すか。最終行だけ見てください。
| 防蟻の回数 | 築30年の屋根 | 平屋 − 2階建て |
|---|---|---|
| 5年ごと6回(推奨どおり) | カバー工法 | +80.2万円(月2,228円) |
| 6回 | 塗装で回す | +38.9万円(月1,080円) |
| 2回 | カバー工法 | +38.2万円(月1,062円) |
| 2回 | 塗装で回す | −3.1万円(平屋のほうが安い) |
推奨どおり6回やってカバー工法なら、平屋が80万円ほど高い。防蟻2回で屋根を塗装で回すなら、平屋のほうが3万円安くなります。




塗装で回せるかどうかも、屋根材と傷み方しだい。塗装は延命であって、更新ではありません。表の下の行に寄せるほど、費用は下がって、手間とリスクは上がります。








📌 この章の要点
差の正体は相場ではなく、数える部位です。防蟻の回数と30年目の屋根の直し方、この2つを決めた人だけが、自分の答えを持てます。
修繕費は、来る年がだいたい決まっています
戸建てには、修繕積立金がありません
80万円は、30年で割れば月2,228円。平屋を諦める理由になる額ではありません。階段のない暮らしに、それだけの価値はありますよね。FPとして怖いのは金額より、ローンの返済と子どもの学費と屋根・外壁の更新が、同じ年に重なることです。屋根と外壁が来る年は、いまカレンダーに書けます。


💰 不動産FPカルタの解説
マンションには、毎月強制的に集められる修繕積立金があります。戸建てには、それがありません。
引き渡しの日にお客様へ渡す書類の束を、私は何度も用意しました。保証書、取扱説明書、検査の記録。その中に、30年後の修繕費の話は1枚も入っていません。
しかも修繕は先送りできます。今年やらなくても家は壊れないので、毎年順位が下がり、いよいよの年にリフォームローンになる。修繕費が家計を壊すのは、金額が大きいからではなく、準備されないまま来るからです。




やることは難しくありません。返済計画の表に築15年と築30年の行を足して、「外壁塗装」「屋根」と書き込む。金額は今日の相場のままでかまいません。行を作らないかぎり、修繕費は「いつか来る不安」のままです。
じゃあ、うちの場合はどっちが安いの?
ここまでの数字の前提は、あなたの土地で動きます。敷地に1m以上の余地があるかで足場の種類が変わり、1階を大きくするほど屋根の面積比は縮みます。




間取りが出れば、この表の前提をあなたの数字に置き換えられます。1階の床面積でシロアリの見積面積が、まわりに1m取れるかで足場の種類が決まる。一般論の表が、あなたの家の表に変わります。
足場の種類も、シロアリの見積面積も、屋根の直し方も、土地と間取りが決まって初めて数字になります。だから、同じ条件で複数社に出させる以外に、自分の家の答えを出す方法がないんです。1社の見積もりだけでは、その会社の前提が高いのか安いのかすら判断できません。
⚠️ 「平屋だからいくら」という相場は存在しません。足場の種類も、防蟻の見積面積も、あなたの土地の形しだいで変わります。
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✍️ 本気度が伝わる「要望欄」の書き方(コピペOK)
タウンライフで理想の間取りをつくってもらうコツは、しっかり要望を書くことです。この記事の前提を、あなたの土地の数字に置き換えてもらうつもりで書いてください。


👇 以下の文章を要望欄にコピーして使ってください。
なお、この記事は「同じ延床30坪」で比べています。実際には、平屋は階段や2階の廊下が要らない分、より小さい延床で同じ暮らしやすさになります。土地と建築費を含めた総額の比較は平屋と2階建て、総額で得なのはどっちへ。
📌 この章の要点
戸建てに、積立を強制してくれる仕組みはありません。金額より先に「来る年」を書き出しておくこと——それだけが、いま手を打てるところです。
まとめ|「老後は平屋がラク」で決めない
- 住宅内でころんだ高齢者39,053人のうち29,783人は居室・寝室。発生場所の上位5つに階段は入っていない
- 2024年4月からは、敷地に余裕がある平屋ほど本足場になりやすい
- 30年の修繕費の差は、両方の部位を数えて月2,228円。前提を2つ動かせば消える
- 屋根と外壁が来る年は、いま分かる。だから準備できる
「老後を考えると平屋がラクですよ」——私も使っていた言葉です。嘘ではないけれど、その一言で決めるには、決めることが多すぎます。




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元ハウスメーカー営業がつくった
「家づくりの道具」4点
家づくりは、ほとんどの人が一生に一度です。だから、会社の比べ方も、担当者への聞き方も、誰にも教わらないまま本番が始まります。
私が売る側にいたころ、「お客様がこれを持っていたら、話がまるで違ったのに」と思っていたものを、4つの道具にまとめました。
- わが家のライフプランシート(Web)
年齢と年収を入れて、建てたい価格帯(ローコスト・中堅・大手)を選ぶだけ。「わが家は、いくらまでの家なら無理なく建てられるのか」——その上限額が出ます。 - 後悔しないハウスメーカー比較チェックシート(PDF)
候補の会社を「5つのものさし」と「担当者チェック」で採点して、ご夫婦で見比べられる一枚です。 - 同じ工法メーカー早見表(PDF)
どの会社とどの会社が同じ工法どうしなのか、36社分の一覧。相見積もりの組み方が変わります。 - 家づくり最新データシート(Web・毎年更新)
坪単価の相場、保証年数、火災保険が下がる「省令準耐火」など、時間で変わる数字をまとめてあります。
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