相続対策や相続税対策について、基礎知識を語る教本やサイトは山ほどあるが、その知識をどう使うかにまで言及したものは、そうない。この「相続塾」は、より実践的なレベルで相続・相続税対策の方法を極限にまでわかりやすくお伝えするものである。


相続税対策として生命保険が利用できると聞いたことがあるかもしれない。

確かに、生命保険は相続税対策とは切っても切り離せない、重要なツールといえる。

ひとくちに生命保険と言っても、多様な種類があるが、多くの相続関係の教本や、相続ジャンルのサイト・ブログで紹介される仕組みは、死亡保険を使った対策ばかりである(このブログでも紹介するが…)。

そういう意味では、今回お伝えするのは、少しばかり変わった方法と言えるかもしれない。
なぜなら、使うのは死亡保険ではなく、医療保険であるからだ。

医療保険とは

ケガ・病気で入院や手術をした際に、保険会社より保険金が支払われる保険。
なお、保険に加入するために支払うお金を「保険料」。保険事故が起きた際に保険会社から支払われるお金を「保険金」という。



今回ご紹介するプランの趣旨。それは、相続税を節税しつつ、孫に一生涯の医療保障を贈ることである。

詳しい仕組みを紹介する前に、どのような効果があるか、まずは事例を見ていただこう。

医療保険で相続税対策をした例

老人守谷幸治氏(仮名)には3人の孫がいる。

守谷氏は、相続税対策に合わせ、孫たちにそれぞれ何か将来役に立つ形で資産を遺してやりたいと考えていた。

そのところ、医療保険が相続税対策になるとのプランを保険会社より持ちかけられた。

保険会社の提案した契約形態は下記のようなものである。

保険契約形態3人の孫たちをそれぞれ被保険者とした3つの医療保険を、祖父である守谷氏が契約者として加入するというものだ。

医療保険は全期前納で支払った為、保険料は孫ひとりあたり250万円程度となり、3人の孫のために合計750万円を支払った。




数年後、守谷氏の相続が発生したのであるが、ここで相続財産評価額に劇的な変化が起きる。

守谷氏の支払った保険料は750万円であった。

さて、相続時の財産評価額はこうなる。

相続財産評価額

そう、750万円→30万円
実に96%の相続財産圧縮効果があったことになる。

かつ、このプランにより
孫たちは、一生涯の医療保障を得ることができ
また医療保険料を今後一切払う必要がなくなったのである。



このプランは、死亡保険を使った対策と違い、節税をして「多くお金を遺す」ことを前提としていない。

お金は、医療保険という商品に変わってしまい、なくなる

だが、これによって、相続財産評価額を9割超カットした上で、お金に代わる価値を孫に遺すことができるのだ。

以降、この医療保険を使った相続税対策の仕組みを解説していこう。

医療保険を相続税対策とできる仕組みづくり

このプランで使う医療保険は、次のようなイメージとなる。

医療保険イメージ図

(専門用語はでてくるが、すべて解説していくので安心してほしい。)

詳しくは後述するが、保険の契約者に相続が発生した場合、相続財産評価額は、払った保険料の額ではなく、契約者の持つ「権利」そのものの額となる。

そしてこの「権利」は現行法上、解約返戻金相当額とされている。

この評価方法こそが、このプランのキモとなる。

医療保険を相続税対策とするこのプランには、いくつかのポイントを押さえておかなければならない。

そのポイントとは、

  1. 契約者を被相続人、被保険者を孫とすること。
  2. 保険料は全期前納で支払うこと。
  3. 保険料の払込期間が短めのものにすること。

これらである。詳しく解説していこう。

契約者を被保険者、被保険者を孫とする

保険に加入する際、契約者・被保険者・保険金受取人をそれぞれ誰にするか決めなければならない。

保険加入に必要な3者

契約者…保険会社と契約し、保険料を支払う者
被保険者…保障の対象になる者
保険金受取人…医療保険金を受取る者


医療保険を相続税対策とするには、契約者を祖父被保険者を孫とする必要がある。
(保険金受取人は、祖父でも孫でも構わない)

なぜなら、祖父の遺す相続財産を「現金」から保険の契約者たる「権利」に転換したいからだ。

医療保険は、契約者である祖父が亡くなっても、被保険者である孫が存命である限り、消えてなくなることはない。
保険契約は依然として継続する。

そして現行法では、その保険の契約者たる「権利」の相続財産評価額は、解約返戻金相当額とされているのである。

解約返戻金とは

保険を解約した時に、契約者に戻される金額のこと。
医療保険には通常、貯蓄機能はなく、解約返戻金はごく少額である。

多いケースでは、日額給付金の10倍というものだ。

例えば、日額10,000円が支払われる医療保険に加入したとすると、この医療保険の相続財産評価額は、10,000円の10倍で、10万円となる。

つまり、この10万円が相続財産評価額となる。

前述の事例では、医療保険加入のため支払った保険料は、ひとりあたり250万円、3人分で750万円だった。

750万円というお金が、一生涯の医療保障という将来価値と変わり、そして相続財産評価額は10万円×3人=30万円にまで圧縮されることになる。

保険料は全期前納で払わなければ意味がない

このプランを利用するならば、保険料は全期前納で支払わなければ意味がない

全期前納とは

保険料を月払いや年払いでなく、契約時にまとめて支払うことをいう。

もちろん医療保険は月払いや年払いも可能であるが、相続税対策としては、いささかスピードが遅すぎる。

年間、数万円という保険料を支払ったところで、相続財産はなかなか減らず、有効な相続対策とはいえない。

まして相続発生後は、保険を継続させるため別の誰かが引き続いて保険料を支払わなければならず、孫に一生涯の医療保障を贈るという今回のプラン趣旨とかけ離れてしまう。

保険料の払込期間が短いものを選ぶ

前述した全期前納という支払い方法であるが、実は保険料を支払った瞬間に全額が使われるわけではない。

わかりやすく言えば、全期前納の保険料は一旦保険会社でプールされ、一定期間ごとに取り崩して保険料に充当される。

であるから、仮に医療保険を中途解約した場合、解約返戻金の他に「未経過保険料」という、まだ保険料として充当していなかった分の保険料も返されることになる。

そして、この全期前納で支払われたお金を保険料として充当しつくすまでの期間(これを「払込期間」という)は、保険会社によって異なる。

例えば、
A社の〇〇という商品の場合、払込期間は2年。
B社の△△という商品の場合、払込期間は10年となっていたとする。

これはつまり、A社は2年で保険料を使いきり、B社は10年で使いきることを意味する

<A社の場合:2年払込>

<B社の場合:10年払込>

未経過保険料解説図

 

本来であれば、B社の10年の払込期間とした方が、返ってくる未経過保険料があると考えるとメリットがあるように思える。

しかし、今回のプランではA社の2年払込期間の方に分がある

なぜなら、相続財産評価額には、この未経過保険料も含まれるからだ。

仮に、10年払込期間の医療保険加入し、その2年後に相続が発生したとしよう。

その際の解約返戻金は10万円、未経過保険料が180万円であったとすると、190万円が相続財産評価額となる。

相続財産の圧縮効果が薄れてしまうのだ。

<A社の場合:2年払込>

相続財産評価額は、解約返戻金の10万円となる。

相続財産評価額

<B社の場合:10年払込>

相続財産評価額は、未経過保険料180万円に、解約返戻金相当額10万円を加えた190万円となる。

相続財産評価額

 

医療保険を相続税対策とするメリット・デメリット

それでは、前述したものも合わせて、このプランのメリット・デメリットを確認していこう。

まずは、メリットから。

メリット①
被保険者となる孫は一生涯の医療保障が得られる。

ここでは孫を例としているが、被保険者となるのは子でも構わない。
保険会社によっては、甥や姪までを対象とできるケースもある。

ケガや病気で入院をすると、症状によって個室を余儀なくされる。

その際、健康保険の対象とならない「差額ベッド代」という個室料金が必要となり、平均で日額7,000円ほど負担が増える。

このプランにより医療保険を贈られた孫は、それらを生涯心配する必要がなくなるのだから、現金をただ贈るよりも感謝の気持ちが深くなる。

メリット②
孫の今後のランニングコストが縮小される。

住宅資金・教育資金・老後資金を人生の3大資金という。
次いで大きいのが生命保険料だ。

一般的に、適切な生命保険の保険料は収入の1割程度と言われている。

その全部ではないが、医療保険の部分に関しては、すでに全期前納で支払い終えている。

今後、月々のランニングコストは長期にわたって削減されることになる。

メリット③
受け取った保険金は非課税。

医療保障として受け取った保険金は非課税である。

いくら受け取ったところで税金の心配をする必要はない。

メリット④
保険料を支払っても贈与税の対象外。

このプランでは、孫を被保険者として保険料を支払うが、あくまで契約者は祖父である。

よって、支払う保険料に贈与税が課せられることはない。

自分が買った車を孫が運転したからといって贈与税は課せられないのと同じことだ。

メリット⑤
数百万円の相続財産が10万円程度に圧縮される。

前述のとおり、保険契約者に相続が発生すると、その保険の相続財産評価額は解約返戻金相当額とされる。

医療保険の解約返戻金は給付日額の10倍程度であるから、1日10,000円の給付がある医療保険であれば、相続財産評価額は10万円である。

メリット⑥
古い保険の方が保障範囲が広いことがある。

孫に若いうちから保険に加入させておくことは、時として特殊なメリットがある。

医療の進歩によって普及した治療方法が、時間を経て保障範囲から外れることがあるのだ。

例えば、私は数年前に「レーシック」手術を受けた。

現在の医療保険には、「レーシック手術は保障範囲外」であるとの一文が付されているが、私の場合は、まだレーシック手術が普及する前に医療保険に加入していた為、手術費用が保険金でまかなわれた。
(全額ではないが…)

続いてデメリットをあげていく。

デメリット①
お金としては遺せない。

このプランの最も根本的なところであるが、保険料として支払ったお金は、孫の一生涯の医療保障という将来価値に取って代わる。

多くお金の遺すことは前提としていない。

デメリット②
解約した場合の返戻金はごくわずか。

貯蓄性のある死亡保険などであれば、将来解約した際に支払った保険料より返戻金が増えることもある。

だが、医療保険は保険料掛け捨ての保険である。

その為、解約しても返戻される金額はごくわずか。

将来解約を検討しているのであれば、そもそもこのプランはお勧めしない。

がん保険も相続税対策になる

医療保険を例にだしてきたが、これとまったく同じことが、がん保険であってもできる。

今や国民の2分の1が罹患する「がん」。

医療保険と合わせて、このがん保険に加入しておくと、更に相続財産評価額を圧縮できる

医療保険に、特約としてがん保障を付帯させることもできるが、注意が必要なのは、支払限度日数だ。

医療保険の場合、「60日型」や「120日型」など、保障が受けられる日数の上限が決まっている。

対して、がん保険の場合は、闘病生活が長引くことが多いため、支払限度日数がないことが多い。

つまり、入院中は限度なく保障が受けられる。

ところが、医療保険に特約としてがん保障を付帯した場合、がんの保障についても、医療保険と同じ支払限度日数となることがあるのだ。

最近の医療保険では、特約のがん保障のみ、支払限度日数をなしとしているところもあるが、よくよく注意されたい。

このプランをお薦めする方

このプランは、特に次のような人にはお薦めできる。

子や孫に、より感謝の気持ちを伝えたい方

現金の生前贈与による相続税対策はよく知られるところで、すでに実施している方も多いだろう。

だが、現金には名前が残らない。

保険を贈るこのプランであれば、いざ保険を利用する際に保険証券が必要となり、そこには契約者である祖父の名前が記載されている。

誰が、誰のために用意した仕組みであるかが一目瞭然であるため、より感謝の気持ちを伝えることができる。

既に保険による相続税対策を講じている方

生命保険を活用した相続税対策で、特によく使われるのは「生命保険金の非課税枠」の制度だ。

この制度は、保険を「権利」としてでなく、保険金(現金)として受け取った際に使う。

受け取った保険金は、その満額について相続税は課税されず、500万円×法定相続人の数を差し引いた額に対して課税される。

この制度を既に利用している方は多いかもしれない。

だが今回のプランについては、この制度とは無関係だ。

使うのは、医療保険(もしくは、がん保険)そのものの「権利」であるので、死亡によって受け取る保険金はそもそもない。

だからこそ、既に保険による相続税対策を講じている方にとっても、お薦めできる内容となっている。

このプランを利用するには

もう一度、医療保険を相続税対策とする3つのポイントを整理しておこう。

  1. 契約者を被相続人、被保険者を孫とすること。
  2. 保険料は全期前納で支払うこと。
  3. 保険料の払込期間が短めのものにすること。

このポイントを押さえた契約をすれば良いだけであって、なにも特殊な医療保険があるわけではない。

このプランを利用するには、もちろん生命保険会社に話を持ちかける必要があるが、残念ながら、説明したところで経験・知識の少ない担当者では、趣旨をよく理解できないかもしれない。

なので以下に、これまでの「まとめ」も兼ねて、保険会社担当者への説明用の文章を記しておく。

多少なりともお役に立てるのであれば幸いだ。

また、できれば単一の保険会社ではなく、複数の保険会社商品を扱う代理店を利用することをお薦めする。

主な理由は、上記ポイントの3.保険料の払込期間が短めのものにする必要があるからだ。

この期間は保険会社によって大きく異なる。

また医療保険を孫ではなく、甥や姪に贈りたいときも、保険会社によってはできないことがある。

複数者の商品を見比べるべきだ。

まとめ

加入する保険:医療保険(加えて、がん保険)

契約者:祖父
被保険者:孫(もしくは子・甥・姪)
保険金受取人:祖父(孫でも可)

保険料支払方法:全期前納

<伝達事項>

保険料は全期前納でお支払いするが、保険料払込期間の短いものを提案してほしい。
理由は、当保険を相続税対策として利用するため。

医療保険の「権利」そのものを相続すれば、解約返戻金相当額が相続財産評価額となるので、大きな財産圧縮効果が見込めるが、未経過保険料が多い間に相続が発生してしまうと、その効果が薄れてしまうから。

 

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